開発協力・国際協力

一定地域の施設メンテナンスを行うAPMという制度:ハンドポンプ修理のヒト問題

おはようございます。タカハシイツロー(@takahashi126)です。

前回のお話はこちら

ハンドポンプの維持管理におけるヒト、モノ、カネの課題についてお話ししていますが、今回はヒト問題。

アドラー心理学では人が生きる上での問題は全て人間関係に基づいていると考えるようですが、ハンドポンプの維持管理問題も基本的には全て人次第です。モノもカネも関わる人がしっかり回せるのであれば問題にならないですし。でも、そんなことを言っては元も子もないですね、、

さて、アフリカの村落地域にあるハンドポンプを継続的に利用する際のヒト問題は何かといえば、修理をするヒトにつきます。

APM

全然関係ないですけど、僕が愛長しているポッドキャストにATPというのがあります。

APMをググってもここでいうAPMは出てきませんので、これは村落給水(Rural Water Supply) 分野の業界用語(Jargon ジャーゴン)でしょう。

APMとはArea Pump Menderの略で地域ポンプ修理工、要するにポンプ修理人です。

例えばアフリカ諸国の村落地域には居住形態によって一定の世帯数に対し一つのハンドポンプが設置されているケースが多いです。国によって定義が異なる場合がありますが、給水率の定義上1キロ以内飲み水を得られる場所があるべきとされています。

画質が悪いですがハンドポンプはこんな感じで点在しています。

30,000人以上が利用しているハンドポンプは青、6,000人以上が利用しているものは緑、6,000人未満が利用しているものは赤で表示されているようです。

APMはその名が示す通り、エリア(地域)に応じて配置することが想定されています。

こんな感じ。

一定エリアにあるハンドポンプの修理を期待されている修理工なので、それぞれ赤丸のエリア内のハンドポンプの修理をすることになっています。

仮にここで色によってハンドポンプの種類が違うと仮定しましょう。以前書きましたが、国によってハンドポンプは1種類に限定されているケースもありますが、主に2種類ありそれらは修理方法も修理に必要な部品も工具も異なります。

India Mark II インディアマークII

India Mark II

Afridev アフリデブ

Afridev

修理工は不具合に応じて必要な修理部品を特定し、それぞれの修理に必要な工具を用いて修理をすることになります。

例えば、India Mark II の修理工具はこんな感じです。

IM II toolkit

すごい多くて、重くて簡単には持ち運べません、、、、

村落地域でハンドポンプを飲み水の水源として利用している住民にとって、常に飲み水にアクセスできるかどうかはAPMがちゃんと井戸を修理できるかどうかにかかっているわけですが、必ずしもAPMがその役割を果たしているとは限りません。

これまで説明した通り、修理に必要な部品(スペアパーツ)があるかないかも大きな問題ですが、部品があってもちゃんと修理できないと、水を汲み上げることができないだけでなく、大きな間違いを起こすとハンドポンプを使えなくしてしまうこともあるくらいです。

SOMAPというプロジェクトで何をしたか

ハンドポンプの維持管理体制を構築し、ハンドポンプが故障して使われずにいる期間(ダウンタイム)を最小限にするという目標を掲げたプロジェクトであるSOMAPが行ったことは、ハンドポンプの修理に必要な部品(スペアパーツ)の販売網を構築するだけでなく、APMに研修機会を提供し修理に必要なスキルアップを行いました。

修理人の技術を向上させることで、適切な修理がされるようヒト問題の解決を試みたわけです。

でも、それはどこでも誰もがやっていることです。

それでも、APMはすぐに修理をしなかったり、住民に不当に高額な手間賃を請求したり、修理の際に揚水菅(水が組み上げられる際に通るパイプ)を井戸の中に落としてしまい井戸を使えなくしてしまったりという事故を起こしたりとトラブルはつきません。また、育成したAPMが他の仕事を始めてAPMの仕事をしなくなることもあります。

ある国ではAPMを組合のような形で組織化し、サービスの向上とAPMの待遇改善をしている国もあります。

日本で言えば電化製品に何かトラブルがあった時にいつでもきてくれる町の電気屋さんみたいな感じでしょうか。(昔はいましたよねw)

そもそもAPMという制度自体を考え直す必要があるとも思えます。機能しないのであれば、機能する制度を構築する必要があるでしょう。

僕が関わっている間、プロジェクトでは組合化などをUNICEFと検討することもありましたが、結局研修をするに留まりあまり根本的な課題解決に取り組むことはできませんでした。

人頼みの修理サービスは結局APM頼みとなってしまったのです。

 

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