おはようございます。タカハシ126(@takahashi126)です。
中東はヨルダンに引っ越してきて早半年が過ぎた。
今まで合計で9年近くアフリカに住んで、10年以上アフリカをフィールドに仕事をしていたけど、新しいチャレンジをしなくちゃならないという気持ちから今の仕事に応募した。
実際に住む中東ヨルダンは、平和で素朴でとても便利なところだ。アフリカでは目にすることのなかった、スターバックスやマクドナルド、H&MやZARAなどがあり、UBERも使えるし、インターネットだって早くて快適だ。
アフリカから来た身にはもはや途上国っぽさのないようにも思えてしまう。
ある理学療法士の活動
ヨルダンの首都アンマンでの中東生活に慣れたある日、ある理学療法士の方の活動現場を見に行った。政府系機関で先天性の病や事故などが原因で障がいを持つ子どもを対象にリハビリを提供している理学療法士の彼と会うのはその日が初めて。
職場に着くと早速シリア難民の男の子が訪れて来たというのでリハビリ治療を見学させてもらった。
交通事故により右足の膝を骨折した男の子は右足が自由に動かなかった。
理学療法士の彼は硬くなった指先から膝まで筋肉をほぐし、曲げ伸ばしの運動をさせる。僕には何を言っているかわからないアラビア語を話し、優しく接する理学療法士。
同行した男の子のお母さんに事故の原因や手術からこれまでのリハビリなどについて色々質問する。
シリア人の男の子はそこから300キロほど離れたシリアの街ホムスから逃れて来たシリア難民。妹が4人いる母子家庭で唯一の労働力である男の子は荷車をひき毎日仕事をしていたという。日本では義務教育がやっと終わるころ、15歳の男の子に一家の生活がかかっていたようだ。
男の子が荷車を引いて仕事をしていたところ、1台の車が突っ込んできた。男の子は右膝にひどい怪我を負って手術をしたらしい。
車を運転していたのは酒に酔ったヨルダン人。多くがイスラム教徒のヨルダン。酒を置いているレストランは中華やイタリアンなど一部のお店だけ。酒屋は街中にあるものの、酒税がとても高く、ビールは500円ほど、ワインも2,000円ほどする。そんな国での飲酒運転。
そんな不幸な事故で足に怪我を負った男の子にさらなる不幸が。聞くところによると、病院で手術後のリハビリ受診を断られたという。なぜなら、シリア人だから。
術後何ヶ月もリハビリを行わなかったため、固まってしまった足の指。足首の色も決してよくはない。
そんな彼の足をマッサージし、タオルを使った曲げ伸ばしをする理学療法士。その仕事を見て、開発協力ワーカーの一つのあるべき姿を見た気がした。
開発支援の現場
僕は国際協力ワーカーとか開発ワーカーと自称する。しかし、ここ最近は現場から少し距離を置いた場所で仕事をすることが多い。
現場とは開発課題が目の前にある場所だ。支援を必要とする人々いて、改善されるべき設備が目の前にあり、社会を支える制度やシステムを作る場所だ。
現実では、多くの開発ワーカーが現場から少し離れたところで仕事をしている。オフィスでパソコンのモニターを見つめ、組織内の関係調整に時間を使う。
全ては現場のため。全てはされるべきことがされるようになるため。
現場から離れた環境に慣れてしまうと、たまに見失うものがある。
「何のためにやっているのか?」「これで正しいのか?」
シリア人難民を治療する理学療法士の方の姿を見て、ふと気がついた気がした。現場で人々が求めるものを提供できるよう頑張らなくちゃならない、と。
そして、現場の大切さを身にしみて再確認した。アラビア語は話せないし、自分の腕に何か特別な技術を持っているわけではない。そんな僕でもできること、やるべきことがあるなら、それは何なのか?
地に足をつけて、現実に目を向け、理想を求め、最善を尽くす国際協力ワーカー、開発ワーカーでありたい。
最後に
男の子は自分に何の責任もないのに、生き抜くために故郷を離れ、ヨルダンに逃げてきた。逃げた先では事故に遭い、差別される。不条理で不公平な世の中。
そんな世の中で僕らができることは限られているかもしれない。
でも、起きていることを知ること、報道されいていることの何が事実なのか、どこに真実が隠されているのか考えること。たとえ事実でも真実でなくとも、情報を共有し、考え訴えること。それだけでも、何か違いを産むんじゃないかと思うこの頃。
もしかしたら、何も変わらないかもしれない。
でも、目の前の患者に向き合う理学療法士の彼のように、今、自分にできることをやる。それが大切だと思う。
誰にも評価されなくても。人知れず山火事にしづくを垂らすハチドリであっても。現場を見ることで気がつく大切な気持ちがそこにはある。
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